Pacific Data Images

 ロサンゼルスは映画向けのCGプロダクションが多いが、サンフランシスコではベイ・エリアを中心にゲームやデジタル・メディア向けの小規模(10〜15名)のプロダクションが集まっている。

 そんな中、Pacific Data Images(以下PDI)は1980年設立で社員数約250名、526台のSGIを使用している。3年前は100名ほどでCM制作の仕事が多かったという。

 最近は大手プロダクションの倒産やリストラ等の人員削減が多いなか、PDIは1996年にDream Works(以下DW)の傘下となり急成長した。現在、PDI株の約4割をDWが所有している。

 PDIは以前からキャラクター・アニメーションとデジタル合成技術で有名であり、イン・ハウス・ソフトを自社開発し使用している。DWはこのソフトのできに注目したらしい。


 現在、CM、映画等の仕事で大変忙しいという。中でも、2年半前からDWと共同制作しているフルCG映画「ANTZ」(米で10/2公開予定)の制作が追い込みとなっている。偽人化した蟻が主人公の映画であるが、キャラクターの動きにはモーションキャプチャは使っておらず、優秀なアニメータがキーフレームで作っているとのことであった。「ANTZ」の制作には、フェイシャル・アニメーション、水の流れ、雲の表現等のために新しいツールが必要だったという。これらのツールも全て自社開発している。これら映画向けに開発された技術やツールの資産はCM制作で有効利用し、2〜3ヶ月で完成するという。PDIの代表作としては、映画「THE PEACEMAKER」「BATMAN & ROBIN」「BATMAN FOREVER」、テレビ番組「Simpsons」、CMではゲータレードやサークルK、日本でも有名なホールズのペンギン等がある。


 プロジェクトの進行は、まず脚本を絵コンテ(ストーリーボード)に起こすことから始まる。詳細な絵コンテが完成すると、これをスキャナで取り込み、AVIDにより時系列のビデオコンテ(ストーリーリール)に変換される。この時点で、おおまかな全体のシーンとカット割り、画面構成が決められる。監督チェックでOKが出たものから次の段階に入っていく。

 ストーリーリールをもとにモデリング、アニメーション、ライティング等の各作業が同時進行に進められる。このとき作業の進行はシーンごとに進めていき、NTSC解像度でレンダリングしてAVIDに送られ、ストーリーリールを置き換える。これをデイリー、ウィークリー、マンスリーによるフィードバックを行いながらブラッシュアップを進めていき、OKとなるとフィルム解像度での最終レンダリングを行い、フィルムに焼かれる。レンダリング処理能力は、週末の二日間にフィルム解像度で10,000枚とのこと。フィルムの編集室も完備している。


 PDIは「ANTZ」の制作も一段落したこともあり、この4月に「CM活動に復帰する」というプレスリリースを行った。新技術の開発無くしてはハリウッド映画のような大きな仕事はとれないが、Digital Domainも「タイタニック」の技術開発に多額の出資をし、倒産寸前にまでなったという。映画制作に入り込みすぎることによる危機感があったのかもしれない。